最近は主に現場記録の闇鍋 すべての趣味の話をします

old → new  ❘   top   ❘  

タグ「読んだ本」を含む投稿2件]

感想

#読んだ本
野﨑まど「タイタン」
20230202233629-admin.jpeg
ネタバレがもちろんある。

超巨大な自律型AIが全てをコントロールしていて、仕事という概念が150年ほど存在しないユートピア。
趣味で心理学の研究をしていた主人公が最近不調だというAIを人格化させて、仕事としてそのカウンセリングを行って解決策を探る…という話。

野﨑まど、概念VS人間の対立構造において純粋な概念のほうが大きく大らかで優位であるということを本当に延々擦ってるけど、この本がメインに据える概念は「仕事」
仕事とは「影響を及ぼすこと」と「影響を及ぼしたと知ること」でこれを総じて「やり甲斐」だという結論としての紐解き方がめちゃくちゃよかったのでメモっておきます。なるほどねと思いました。
日々なぜ私は働くのか……を感じた時にまあなるほどとなれるかもしれない。なれないかもしれない。

人間が作り出したんだから人間が上位にあるだろう、AIも人間的存在と考えたときに、仕事が嫌になった理由は忙しいからだろう…とAI人格を人間基準ではかるのはただの人間の驕りだという結論だった。
人間は進化の余地がもう残されてないけどAIには進化の余地があるので。
大きな事件が起こったあとの世界のことが多く語られなくて〆方もこれでよかったな、と思いました。
仕事をやりたくなくて不調だったわけじゃなくて人間ちゃんの世話をするって仕事が暇すぎてやりがいがなさすぎて鬱だったんだよ🙂人間ちゃんのお世話なんて簡単だからね。みたいな上位存在なのでちょっと興奮してしまいました。
すごく、これはちょっと、AIだとするにはあざとすぎるんじゃないか…と思った道中のコイオスやフェーベの人格描写も、最終これに繋がるんだと思ったらフフ…となれました。
人間に好かれるような挙動をするなんて実際上位存在にとっては造作もないことなんだなと考えます。


人間の尺度じゃとても測れない、純粋な上位存在に片手間に管理、されたい!!!!!!!!
野﨑まどの根本思想、相変わらず強い。すべての著書でこの思想が一貫していてめちゃくちゃすがすがしい。
それでそういう圧倒的概念のための賛歌であり、それが反転して人間賛歌にもなってるような…不思議な読み物でした。
面白かった。野﨑まどの著書は4冊くらい読んだんだけど人に一番お勧めしたいのはタイタンかも。SFだというのもあるからあんまり怖くないし…(「2」の思想が怖すぎたため…)

あとがき品田遊先生でそれもよかったし、オチもついてて読み物として面白かった。ショートショートの世界すぎる。close

感想

#読んだ本
野﨑まど「小説家の作り方」
ひとつ前の日記書いたあとにお風呂で読みはじめてそのまま読了した。
20230126225834-admin.jpeg

前に読んだ2作より短めなのもあり、内容も軽めでそんなにいやな気持ちにはならなかった。でもめちゃ思想滲み出てるなと思えてよかった。人間より創作物のほうが抽象的で、概念化されてるゆえに純粋でいいよね、そうでしょ?みたいなのが。これを読みにきた。
なんかそういうめちゃめちゃ強い思想をラノベ調の軽い読み口とポップなキャラクターにくるんでお出ししている作風だったなって思い出しました。なんかコンパウンドの有機物である人間と、抽象や概念そのものとしてのAI(人工物)の対比がつねにすごいし、作者は明らかに後者に肩入れしてる。AIからの管理社会を望んでいそうですよね(偏見?!)これは言い過ぎかもだけど、そういう概念存在への憧れと、そういう概念存在がもしもあったらこの現実はどうなるだろうという仮説がめちゃ読み応えがあり、良いSFです。オチがぜんぜん想像つかなかったし。
SFの要素はそれがあるとするところから組み立てるものだと思うので、そのもっともらしさの描写が巧みだと説得力があるなと思うんだけど、その部分の展開のバランスがうまいなっておもいます。設定が不必要に細かすぎないし、でも描写に伏線もあってオチへのつながりにも納得できるので読み物として気持ちいいです。
あと、小説讃歌の話でそれもよかった。私も小説が好きなので。

なんか終盤で出てきたラノベの強キャラっぽい人って他作品にも出てきてましたねそういえば。同じ現代日本が舞台なんですかね。実家帰ったらまだあると思うので前に読んでこわかったやつも再読します。いい感じに忘れてるし…

これはそんなに関係ない話だけど、昔、佐藤友哉のある作品を、これは現代日本が舞台のミステリーでトリックのある殺人事件なんだと思って読んでたら、オチで突然被害者は双子のアンドロイドでしたとか言われた時はマジでハァ?ってなってキレました。作中のリアリティラインがガタつくのはどんでん返しではなく読者への裏切りですよ。マジで。そうという描写があればいいんですけど、なかった、少なくとも私は読み取れなかった。中学生くらいに読んだ本なのにいまだによく覚えています。それ以来佐藤友哉の作品を読むのを避けているくらいには…close